クーリングオフ基礎知識紹介
特定商取引法はクーリングオフを規定しているのみではなく、業者に対しての様々な遵守義務なども定めています。こうした遵守義務について知っておけば、業者に対して「それは特定商取引法違反だ」と警告でき、威嚇行為としても有効だと思われます。
氏名等の明示義務(3条)
訪問販売などをする業者は、商品などの売り込みに先立って消費者に対して、販売業者等の氏名、名称などを明示するとともに、契約の勧誘であることや一定の商品の売り込みであることを明示しなければなりません。尚、ここで販売業者の氏名とありますが、これは販売員の氏名ではなく所属している会社や業者の名前をいいます。
例えば、「私は○×株式会社の△■ですが、今回は羽毛布団の勧誘・販売に来ました」などと自己紹介するのが法3条に従った氏名の明示義務を果たしたといえます。商品の種類については具体的な種類(何の羽毛でできているかとか、製作会社や原産地はどこであるか)などまで明示する必要はありませんが、化粧品、食料品など一定のイメージがもてるくらいまでには特定する必要があります。
これらに違反した場合には刑事罰は課せられませんが、行政規制の対象などにはなります。
書面の交付義務(4条、5条)
契約を申し込んだ場合、または締結した場合には業者には書面の交付義務が課せられています。
この書面には以下のことが記載されていなければなりません。これらは絶対に記載しなければならないとされており、一つでも遺漏があると法違反ということになります。
- 商品やサービスの販売価格
- 代金の支払時期・方法
- 商品やサービスの引渡時期
- クーリングオフに関する事項
- 経済産業省令で定める事項(事業者の氏名、担当者氏名、申込や契約締結の年月日、商品の形式など)
クーリングオフに関する事項については契約申込、または締結の段階で書面などによって「クーリングオフができますよ」ということを告知する必要があるということになります。この告知がなされた時点がクーリングオフの8日間の起算点となりますので、例えば書面を受け取っていないのであれば10日後でも1ヶ月後でもクーリングオフができるということになります。
尚、書面交付義務に違反した場合で消費者利益を害すると認められる場合には罰金、業務停止命令などの対象にもなります。
勧誘時の禁止行為(6条)
勧誘時には以下の行為が禁止されています。
a.不実の告知
以下のことについて不実のことを告げるのは禁止されています。
- 商品の種類や効能について
- 販売価格など
- 代金の支払方法などについて
- 引渡し時期、提供時期
- クーリングオフや契約の解除に関する事項
- 顧客が当該契約を必要とする事情に関する事項
- その他顧客の判断に大きく影響を及ぼす事項
b.事実の不告知
上の1~5の事項について故意に事実を告げないことも禁止されています。
c.威迫、困惑の禁止
相手を威圧したり、困惑させるような行為も禁止されています。
d.目的を隠した勧誘の禁止
目的を秘して相手に近づいて公衆の出入りしないところに誘引して勧誘することも禁止されています。
なお、3~6条違反の有無にかかわらず、クーリングオフをすることは認められています。