クーリングオフ基礎知識紹介
クーリング・オフ、無効、取消。
これらは契約の効力をなくすという点では共通していますが、では何がどう違うのでしょうか。
無効は絶対的
まず、無効というのは非常に効力が強い点に特徴があります。
例えば無効はそもそも効力が発生しないので誰かが主張しなければならないということはありません。更に言うと最初から効力がないものとして当然に取り扱わなければならないため、無効な行為を元に別の行為が発生したとしてもそれも当然に無効ということになります。
また、何時まで経っても主張することができます。
クーリング・オフと取消の共通点
この点、クーリング・オフと取消は無効と異なる効力を有しており、無効とは線を画しています。
例えばクーリング・オフや取消は効力自体はひとまず発生しています。例えばクーリング・オフもしくは取り消しの対象となるような絵画の取引だったとしても、契約締結によってひとまず絵画の所有権は買主(消費者)に移り、業者に対する現金の支払義務が発生します。取消、もしくはクーリングオフを実行してはじめて、絵画を購入したという契約が無かったものとして扱われるわけです。
また、取消やクーリング・オフを主張できる人は限られています。無効であれば誰かが言うまでもなく無効になるわけですが、取消やクーリング・オフは本人など法律で規定されている取消権者でなければ主張することができません。
例えば悪質商法の大嫌いな消費者保護団体が、「あの絵画の売買は悪質商法だ。そんな取引は無かったことにすべきだ。取消かクーリング・オフにしよう」と主張したとしても、買った張本人が「確かに押し売りみたいで気分のいい売買じゃなかったけど、この絵もよく見たら趣があるし部屋に飾るにはいいものだ。新しいのを探しに行くのも面倒だからこれでいいですよ」と答えた場合に、当事者でない消費者保護団体が「ダメだ、悪質商法は許さない」と取消をすることはできません。
結局のところ、無効は常に×なのであり、取消やクーリング・オフは最初は○だけど×にすることもできるとなります。
クーリング・オフと取消の相違点
まずは期間の長さという点でかなりの相違があります。クーリング・オフは基本として8日間ですが、取消は消費者契約法によるものであっても半年というそれなりに長い期間が与えられています。
また、追認についても相違があります。追認というのは「これは取り消しうる契約のようですが、私はこの契約を認めますよ」と追って認めることをいいます。
取消の対象となる行為についてはこうした追認行為(実際には分かっていて後払いの代金を支払ったとか、「早く商品を渡してください」と催促するなど)をした場合には以降の取消はできないとなります。協力行為をした以上は、仮に取消うる原因があったとしても相手が「ああ、この人は契約を守るつもりなんだ」と思うでしょうし、そうした期待を一度形成した以上はいくら取消の原因があるからといってこれを認めると、今度は相手が不当に損をするのではないかということになるからです。
一方、クーリング・オフについては期間内であればクーリング・オフをすることができるとされています。この場合も相手が「この人は代金を支払ったから大丈夫だな」という期待を抱くことにはなるわけですが、クーリングオフの場合は期間が短いですし、その期間内であれば期待が裏切られてもそれは仕方ないだろうとなるわけです。