クーリングオフ基礎知識紹介
消費者を取り巻く法律は様々です。
基準となる民法しかり、消費者契約法しかり、特定商取引法しかりと。
これだけ法律があると、「この場合にはどの法律の規定が適用されるの?」なんて場合がでてくるかもしれませんし、あるいは業者の言い訳などに「別の法律ではこうなっていますから、その言い分は通用しません」なんていう場合があるかもしれません。
そういう場合にはどうなってくるのでしょうか。
例えば消費者契約法については11条に他の法律と競合する場合についての規定が設けられています。
消費者契約法・第11条
- 消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し及び消費者契約の条項の効力については、この法律の規定によるほか、民法及び商法の規定による。
- 消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し及び消費者契約の条項の効力について民法及び商法以外の他の法律に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
消費者契約法は消費者の契約に関する一般法という部分がありますから、個別の態様について規定された法律についてはそちらが優先するという立場になっています(11条2項)。従いまして、例えば特定商取引法と重複する場合には特定商取引法が優先することになります。具体的に問題となるのは住宅の品質確保の促進等に関する法律第87条(免責条項の制限)や、割賦販売法第30条の3(損害賠償の予定の制限)、宅地建物取引業法38条(損害賠償の予定の制限)などです。これらの場合は個別法が優先するということになります。
要件などについて重複していない場合には、どちらでもいいというのが一般です。ですので、特定商取引法のクーリングオフと消費者契約法の取り消しはどちらでもいいとなっています。仮に「この場合は消費者契約法の取消にかかる事例ですので、不実告知のない今回の場合にはクーリングオフはできませんよ」などと相手が言った場合にはそれはクーリングオフ妨害となりますので、これに騙されて8日間を過ぎたとしても尚クーリングオフはできるということになります。
民法や商法と個別法規定が重なり合った場合にはどうなるかという場合も、基本的には個別法が優先すると考えられています。それぞれが個別の場合に即した法律であるため、一般原則を定めただけの民法よりは解決に資するという考え方があるからです。
では消費者契約に関する一般法たる消費者契約法とすべての契約行為に関する民法とが重なった場合にはどうなるでしょうか。この場合には消費者契約法11条にあるようにどちらでもいいということになります。悪質な不実告知などがあった場合には消費者契約法4条に基づく取消をしても構いませんし、民法96条の詐欺による取消をしてもよいということになるでしょう。