クーリングオフ基礎知識紹介
キャッチセールス
キャッチセールスとは、繁華街などで「アンケートにご協力いただけませんか?」などと言って声をかけ、巧妙に事務所・営業所に一緒に来るように促し、事務所等において長時間にわたる説得を行い、高額の取引に関する契約書にサインをさせる悪徳商法です。
キャッチセールスで契約させられるものは、エステサロンでの脱毛・痩身といった美容施術関係のサービス、美容機器、健康食品あるいは化粧品などであることが多いです。
キャッチセールスは特定商取引法における「訪問販売」にあたり、一定内容の書面を受け取ってから8日間はクーリングオフが可能とされています。
また、キャッチセールスによる取引のうち、エステサロンにおける美容施術サービスを内容とする取引等の場合は、特定商取引法の「特定継続的役務提供」というものに該当し、キャッチセールス等の取引形態にかかわらず、一定内容の書面を受け取ってから8日間はクーリングオフが可能であるほか、クーリングオフ期間経過後の中途解約制度による解約を行なうことも可能な場合があります。
その際、関連商品としての美容機器あるいは化粧品等を購入させられた場合、使用状況などにもよりますが、その商品の売買契約を解除することも可能となるケースもあります。
なお、キャッチセールスの場合、事務所等に連れて行かれた後に長時間にわたって勧誘を受けるということも少なくなく、契約するまで無理やり帰らせないというような、いわゆる「退去妨害」に当たるようなケースもあります。
この場合、クーリングオフ期間を過ぎていたとしても、消費者契約法に基づいた契約取消が可能となります。
アポイントメントセールス
電話による勧誘で「あなたが当選しましたので、どこに何時に来てください」等といって誘い出し、高額の契約を結ばせるという悪徳商法です。
最近目立つ事例としては、会員権、英会話スクール、学習塾、海外旅行の割引サービスなどです。
また、アポイントメントセールスと似たものに、 「デート商法」があります。 これは、電話による誘い出しが異性により行なわれるもので、デートの呼び出しを装うものです。
これらの手段での契約によく見られるものには、指輪・ネックレス等の宝飾品、絵画、会員権といったものが挙げられます。
もし契約を結んでしまった場合は、アポイントメントセールスは特定商取引法の「訪問販売」に該当しますので、一定内容の書面を受け取ってから8日間はクーリングオフが可能です。
また、クーリングオフ期間が過ぎてしまった場合でも、アポイントメントセールスによる長時間の勧誘において、例えばその場から退去したい旨の意思を表示したにもかかわらず、契約するまで退去させてもらえなかったような事情がある場合は、消費者契約法にある“退去妨害”に当たるものとして取消事由に該当することも考えられます。
マルチ商法
マルチ商法は、最近では、ネットワークビジネスやコミュニケーションビジネスなどという呼び方をするようになっています。
ネットワークビジネス・マルチ商法は商品を販売する会員を次々に勧誘して、ピラミッド型の商品流通組織を構築し、自分の組織における商品の販売実績に応じて何%という報酬を受け取る仕組みです。
ネットワークビジネス・マルチ商法自体は違法ではありませんが、契約書面の発行義務や勧誘活動時の説明義務などの厳しい規制があります。
ネットワークビジネス・マルチ商法は、特定商取引法の「連鎖販売取引」に該当します。
「連鎖販売取引」とは、
- 物品の販売(又は役務の提供等)の事業であって
- 再販売、受託販売若しくは販売のあっせん(又は役務の提供若しくはそのあっせん)をする者を
- 特定利益が得られると誘引し
- 特定負担することを条件とする取引(取引条件の変更を含む。)
をするものをいいます。
マルチ商法(ネットワークビジネス)は、一定内容の書面を受け取った日または商品を受け取った日のいずれか遅い方から20日間はクーリングオフをすることが可能です。
また、クーリングオフ期間を過ぎてしまった場合も、将来に向けての中途解約をすることができます。
内職商法
内職商法とは、電話勧誘や新聞の折込チラシや求人広告などで、「自宅で高収入」「高額副業」などとうたって、サイドビジネスや内職、SOHOといった名目で人を集め、応募してきた人に対して、仕事を紹介する代わりに登録費や研修としての教材費などを高額で購入させるだけで、結局は仕事を紹介しないという悪徳商法です。
内職商法の種類としては、最近ではパソコンを使用した「ホームページ作成」「データ入力」「医療事務(レセプト作成)」などが多く、この他、「宛名書き」、「テープ起こし」、「校正」、「チラシ配布」などがあります。
内職商法は、法令上は、特定商取引法の「業務提供誘引販売取引」にあたり、一定内容の書面を受け取ってから20日間はクーリングオフによる契約解除が認められています。
これは、他のクーリングオフ制度と比べて、被害が大きくなる可能性があるため、いわゆる「マルチ商法」と呼ばれる連鎖販売取引の場合と同様に、最長のクーリングオフ期間となっています。
モニター商法
「モニター商法」とは、健康食品や化粧品等を試験的に使用することにより、その意見・感想等を報告するという、モニターとしての仕事を与える代わりに、当該商品を購入させるという手口のものをいいます。
モニター商法においては、モニター料ですぐに取り返せる旨を告げて安心させるということがほとんどです。しかし、実際には、報酬で元が取れるほどの仕事は与えられないことや、一切仕事が与えられないことが多いようです。
一定の仕事を与える代わりに商品の購入等を要求しているようなケースは、特定商取引 法の「業務提供誘引販売」に当たる可能性が高く、また、勧誘にあたってのきっかけが街頭でのキャッチセールによる場合も多いですので、いずれかに該当すれば、一定期間内はクーリングオフすることにより解約することが可能です。
現物まがい商法
特定の商品販売に関する契約を締結するものの、実際には、業者側において当該商品を資産として運用・管理するという名目で引き渡すことはなく、消費者には預り証等を交付するのみで、業者が運用・管理する一定の期間内において生じた運用利益を消費者に配当するという取引を預託取引と呼びます。
この預託取引の場合、預り証以外には渡される物がなく、現物が存在するかどうかも疑わしい、もしくは実際は存在しないことが多く、「現物まがい商法」と呼ばれます。
金・プラチナ等の貴金属、真珠・ダイヤモンド等の宝石類、ゴルフ会員権等の施設利用権などが対象となります。
現物まがい商法の場合、運用利益をある程度の期間は配当したりするので、しばらくは被害者が現物まがい商法であることに気づかないことも少なくありませんが、もしこのような契約をしてしまった場合は、少しでも早く解約手続をとることが重要です。
この点、「特定商品等の預託等取引契約に関する法律」は、契約後であっても一定内容の書面の交付を受けた日から14日以内であれば、クーリングオフによる契約解除をすることが認めています。
また、同法では、クーリングオフ期間経過後であっても、預託者は将来に向けていつでも解約することができるという中途解約制度もあります。
中途解約の場合、クーリングオフと違って解約する側の賠償金・違約金の支払が免除されているわけではありませんが、契約額の10%までと定められています。
さらに勧誘の際に、業者が「絶対に儲かります」などと言っていたような場合は、消費者契約法の「重要な事実に関する不告知」、「不確定な事項に関する断定的判断の提供」等に該当するとして、契約を取り消すことができる可能性もあります。
ネガティブオプション
ネガティブオプションとは、突然、消費者のところに注文をしていない仏具、神具、単行本やビデオソフト等の商品が送られて来て、一方的に代金を請求される悪徳商法のことをいいます。
最近は、代金引換郵便で送られ、勘違いしてその場で代金を支払ってしまうという、代 引郵便制度を悪用したものもあります。
突然、商品が郵送され、「購入されない場合は、~以内に返送して下さい。期限内に返送されない場合は、購入されたものとみなします。」などといった文面が添えられています。
また、事前にアンケートを配布し、その回答者に、後日、商品を送り付けてくることもあるようです。
特定商取引法によると、商品が送られてきてから14日間、業者に引き取り請求した日から7日間経過すると、受取人は、その商品を自由に処分してよいとされています。
ワンクリック詐欺
ワンクリック詐欺とは、ウェブページ上の特定のアダルトや出会い系サイト、勝手に送られた電子メールに記載されているアドレスなどを1回クリックすると、「ご入会ありがとうございました。」等の文字やウェブページが表示され一方的に契約したことにされて料金の支払を請求することです。
ワンクリック詐欺においては、法的にはそもそも契約は成立すらしていないので、契約の無効を主張することが可能です。
かたり商法・点検商法
かたり商法とは、公的な団体を名乗って訪問してきて、勘違いさせて物を売りつける悪徳商法です。
点検商法とは、点検を装って、不当に高額な備品設置工事あるいは住宅リフォーム等の契約を迫る悪徳商法です。
「かたり商法」「点検商法」を問わず、訪問販売で契約した場合であれば、一定内容を備えた書面の交付を受けたときから8日間はクーリングオフが可能です。
また、クーリングオフ期間が既に経過してしまっている場合、「かたり商法」「点検商法」による契約は、重要事項に関する「不実の告知」に該当するとして、消費者契約法の規定に基づき契約を取消すことも考えられます。
催眠商法
催眠商法とは、一定の場所に人を集め、会場を閉鎖的にした上で、言葉巧みに来場者の群集心理を操り、冷静な判断力を欠いたところで一気に高額の商品を売りつけるという手口のものです。「SF商法」とも呼びます。
催眠商法の場合も、一定の会場を貸しきって即売会を行うため、いわゆる「営業所等」に当たらないと見られるような場合は、特定商取引法の「訪問販売」にあたり、一定内容を備えた契約書等の書面を受け取ってから8日間はクーリングオフによる解約手続が可能です。
つまり、取引に当たって何ら書面を受け取っていないような場合はいつまでもクーリングオフが可能です。
また、「指定消耗品」に該当しない限り、商品を既に使用・消耗していたとしても返品はできます。
ただ、会場が「固定の施設で、かつ2~3日を超える期間営業されている場所」である 場合は、いわゆる「営業所等」とみなされてクーリングオフができない場合もあるので注意が必要です。
また、「現金で購入して、かつ3,000円未満の物」である商品は、クーリングオフの対象外となってしまいますので気を付けてください。